矢野さん
 くっそー。完全に振り回されてるな……。今度の日曜日、覚悟しとけよ矢野。


 フンっと鼻で笑うと、暫くタクシーが消えた方向を見つめアパートに戻った。


 厄介な奴は付き合っても厄介な行動ばかりで、振り回される身にもなって欲しい物だ。


 だけど、それを楽しんでいる自分がいる――。


 予想に反する矢野の行動はキツイ事もあれば、ドキッとさせられる事もある。


 変な言い方だが、ある意味サプライズ的な感じに思える。

 あれ?……と言うことは、俺って実はMなのか……?


 思わせ態度で振り回す矢野は大人しそうでSか!?


「……ハハ」


 思わず失笑すると、まだまだこれからも矢野に振り回されるんだと思うとため息が漏れた。


 部屋に戻ると、矢野から貰ったプレゼントの財布を手に取り眺める。


 何気なく中をみてみると、お札を入れる所に何か紙が挟まっていた。
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