矢野さん
 車で15分ほどした所にある、清潔感ある白を基調にした外観のこじんまりしたジュエリーショップに着くと、車を停めてガラス張りの重たいドアを開け中に入る。


「いらっしゃいませ」


「こんばんは、鈴木さん。用意出来てますか?」


 迎えてくれた顔見知りの女性店員の鈴木さんにそう言うと、「はい」と笑顔で頷いた。


「すぐお持ちします。少々お待ち下さい」


 彼女はそう言うと、光輝くジュエリー達が並ぶガラス張りのカウンターの下から、白の小さな紙袋を取り出した。


「橘さん。頑張ってください。応援してます」


 鈴木さんは紙袋を俺に渡しながら、意気込んでそう言った。


「ありがとう。無理言って3ヶ月間通わせてもらって作ったからな……上手く行く事を願うよ」


「きっと大丈夫ですよ」


 鈴木さんはそう言うと、ふわっと優しく笑った。


 紙袋を受けとる際に、ふと彼女の左薬指に付けられたハートダイヤの指輪が目に入った。


 矢野もこんな風に付けてくれるかな……。


 期待と不安が頭の中を駆け巡る――。
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