矢野さん
 鈴木さんにお礼を言うと、店を出て車に乗り込んだ。


 急いで矢野と待ち合わせしている場所へと車を走らせる。


 あー……緊張するなー……。


 車の運転をしながら早く打つ鼓動を落ち着かせようと、大きく深呼吸をした。


 信号が赤になり車を停めると助手席に置いた紙袋を見つめる――。
 
 
 まさか矢野に、今まで付き合って来た自分の思いをぶつける日が来るとは思わなかった。


 最初はタイプじゃないし、好きじゃなかったのに。まさか付き合って一大決心する日がくるなんて……。


 変なの……。


 そう思うと、フッと鼻で笑う。


 再び前を向くと信号が青になり、車を発進させた。


 付き合ってどんどん矢野を知ると、矢野が可愛くて堪らない――。


 人前で俺がイチャつこうとすると嫌がるくせに、二人きりになるとやたら甘えて俺から離れない所や、キスをする時、一生懸命背伸びをしてくる所。矢野が怒った時に「ワッフル食べに行こうか」と言うと、すぐ機嫌がなおる所や、俺がベッドに寄りかかり膝を立ててテレビを見ていると、いつも膝の間を割ってチョコンと座ってくる所とか……。


 あーまだまだ矢野の可愛い所がありすぎて頭可笑しくなりそう!


 ちくしょー!大好きだー!


 深呼吸で静めた筈の激しい鼓動がまた鳴り出す――。
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