矢野さん
 勿論、喧嘩もあったし心がスレ違がった事もあった。


 俺の軽はずみな行動で矢野を泣かせた事だってあるし、それで別れを突きつけられた事もある。


 その都度、ちゃんと矢野と向き合って自分の思いを伝えてきた。矢野を離したくなくて……、後悔したくなくて……。


 そんな危機を乗り越えて、俺は今日矢野に思いをぶつける――。


 2年半――。それはまだ短いのかも知れない……。でも、俺にとってこの2年半は、とても濃密で自分の行き着く答えを出すのには充分な時間だった。


 はぁーっと再び大きく深呼吸をすると、待ち合わせ場所へと急いだ。


――――――――――
――――――


 待ち合わせ場所の居酒屋へ着くと、案内された席に座り矢野を待った。


 落ち着かなくて、スーツの右ポケットに入れた小さなジュエリーボックスを服の上から何度も触る。


 あー……やべー。マジ緊張する……。


 しかも口の中が既にカラカラだし……。

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