矢野さん
 近くにいる店員に頼んで水を貰うと、一気に飲み干す。


 がんばれ俺!!


 そう自分に言い聞かせる。


 今日は金曜日と言うこともあり、いつにも増して店は賑やかだ。


 この居酒屋は矢野と付き合う前から赤崎や祐子さんと4人で飲んでいる場所――。


 そして――。


 矢野と初めて会った場所。


 その時、俺を嫌いだと言った矢野は今日なんて返事をするのだろうか。


 喜んでくれるかな……。


 俺の想いに頷いてくれるかな……。


 いや――、矢野の事だから、もっとロマンチックな場所でして!って怒るかな?


 そう思うと、思わずフッと笑った。


 強がりで頑固な矢野……。でも本当は泣き虫で自分の気持ちを隠そうとする君は、俺が思っている以上に弱く脆い……。


 俺が守ってあげる――。誰よりも強く正しく居ようとする君をずっと支えてあげる。


 それが俺が好きになった矢野だから。君が君らしくいてくれるなら――俺はずっと側にいたいんだ……。
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