矢野さん
 頑張れ……頑張れ俺……。一世一代……!男見せたれ!!


 そう決心すると、矢野にバレないように、ポケットの上からジュエリーボックスを力強く握った。


 矢野は適当に注文すると、俺をジッと見つめ口を開いた。


「どうかしたの?なんか怖い顔してるよ?」


「え!?そ、そう?普段と変わらないけど」


 緊張から険しい顔になっていたのか、慌ててひきつった笑顔で矢野を見る。


 そんな俺に矢野は不思議そうな顔をした。


「あー……誕生日なのに場所がいつもの居酒屋って……なんかごめんね」


 矢野の視線から逃れるように目を逸らして言うと、フフっと矢野の笑った声が聞こえた。
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