矢野さん
「そんな事気にして難しい顔してたの?」


「いや……まぁ……」


「私は別に気にしないよ。どこでもいい。橘さんといれるなら」


 矢野に視線を戻すと、笑顔で俺を見ている。


「そっか……」


 嬉しい言葉と優しい笑顔を見て、さっきまでの緊張が少し和らいだ気がした。

 よし――!!


 大きく深呼吸をすると、真剣な顔で矢野を見る。


「矢野さん。聞いて欲しい事があるんだ」


「え?」


 俺の真剣な眼差しに、笑顔だった矢野の顔が徐々に強ばって行く。


「なに?なんか怖いんだけど……」


 そう言いながら、テーブルに置いていた両手を膝に置いて、何を言われるんだろうと不安な顔で俺を見た。
< 410 / 419 >

この作品をシェア

pagetop