矢野さん
 驚いた表情をしたまま、矢野の瞳から大粒の涙がポロポロと落ち出した。


 そんな瞳でジュエリーボックスから俺に視線を向ける。


「い……いいの?」


 顔を歪ませ、ボロボロ涙を流しながら矢野は小さな声で聞いてきた。


「うん。矢野さんに受け取って欲しい」


 そう優しく言うと、鼻と口を覆うように手を当て肩を震わせ泣き出した。


 嬉し涙を流す彼女を見て、ホッとすると心から想った――。


 矢野と一緒に生きていきたい。そして一生愛し続けて行きたい……。君はずっと俺の光であって欲しいんだ。


 そう想いながら、泣きじゃくる彼女に微笑した。


――――――――――
――――――


「うわぁ……ピッタリ……素敵」


 大号泣した後、矢野は泣きながら嬉しそうに指輪を受け取ってくれた。


 ただ、注文した料理を持ってきてくれた店員が大号泣する矢野を見て何か勘違いをしたのか、俺を「女泣かせの最低野郎」とでも言いたそうな顔で鋭い視線を送ってきた……。


 まぁでも……。矢野が喜んでるんならいいか。

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