矢野さん
 暫く二人で見つめ合うと、冷めない内にと運ばれてきた料理を食べ出した。


「矢野さん。今日から婚約者なんだし……そろそろ互いの呼び名変えない?」


「え?うーん……そうだね」


「じゃあ、今日から遥って呼ぶね」


 そう言うと、矢野は「なんか変な感じ」と言いながら照れながら笑った。


「俺の事は春人って呼んでよ」


「それは嫌」


 矢野の即答に、思わず箸をもったまま笑顔で固まる。


「……なんで?」


「私、あだ名で呼びたいの。それにね、もう決めてるの」


 矢野は嬉しそうにそう言うと、フフっと笑った。


 嫌な予感しかしない……メチャクチャ嫌な予感しかしない……。
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