矢野さん
 でも……何故か無性にイライラする――
 それはたぶん――あの男の態度に腹が立ったから。

 きっと、それだけだ――……。

 黙々と二人歩いて駅に着くと、矢野が頭を下げてお礼を言ってきた。

「今日はありがとうございました。キャンドルまで買って頂いて」

「いや、俺もご馳走になったしお菓子も貰ったし、ありがとうね」

「いえ。大したお礼も出来ずごめんなさい」

 矢野はそう言うと、上げた頭を再び下げた。

 律儀な矢野。

 真面目な子なんだな……。

 深々と頭を下げる矢野を見てそう思った。

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