矢野さん
 出てきた矢野が俺しかいない事に気づく

「赤崎と祐子さんは先に帰ったよ。矢野さんは俺が送るよ」

振り返る事なく顔だけ横に向け後ろにいる矢野を横目で見る

「……いえ。タクシーで帰ります」

 俺を見る事なく携帯を取り出す為か、鞄をあさり始めた。

 可愛くねー……。

 ハァッと小さくため息を吐くと、矢野を振り返る。

「じゃあ俺も先に帰るよ。おやすみ」

 鞄をあさっている矢野にそう言うと、アパートの方向へ歩きだした。

 すると、店からお客が出てきたのかガラガラと言う音と共に酔っぱらったおじさんの賑やかな声が後ろから聞こえた。
 
「つぎ行こう~つぎ~。」

「あんれぇ?お姉ちゃんここで何やってんのぉ?」

「ひとりぼっちかぁ?一緒に飲みに行くかい?ん?」

 もしかして……。

 矢野絡まれてない?

 おじさん達の会話を聞いて、思わず振り返ると酔っぱらったおじさん3人が矢野をニヤニヤした気持ち悪い顔で絡んでいる。

 矢野はかなり嫌そうな顔をしているが3人に囲まれて身動きが取れない様だ。
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