恋なんて、できないと思ってたんだ。
母さんはさ、単純だから、俺が今までと全然違っても気が付かないで、


『ヒュウガは素直な子になったね。ヒナタを見習ったの?』


なんて。

無神経なこと聞いてくるんだ。

ヒナタは気づいて、心配してくれた。

でも、俺はヒナタになんか心配されたくないって、

思っちまった。

だから、ヒナタにも誰にも『俺』を見せなかった。

大丈夫だよってヒナタに言って。

女に性格かわったねって言われたら、もとからこんなだったよって言って。


いつの間にか、『俺』の居場所なんてなくなってた。


『僕』を見てる人ばっかになって。


アキラみたいに『僕』が作りものだって

気づいてくれる人もいなくなって。


誰も、信じられなくなったんだ。

みんなみんな、『俺』なんか見てないんだ。


でも、アキラは、俺のことみてくれた。


『俺』を救ってくれて…ありが、と、・・・・ゥァアアアア・・・!」



そっか、ヒュウガもなのか。

僕、と同じくらい大きな、過去を背負ってた。
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