恋なんて、できないと思ってたんだ。
僕は、そっと泣き出したヒュウガの背中に手をまわして、優しく撫でた。


昔みてぇだな。


唐突にそう思った。


昔は、こうやって『彼』の背中を撫でた。


昔は、僕は『彼』の…だったから。


でも



あんな日々は二度と戻ってこねぇ。


僕がそうした。


壊した。 コワシタ。


こいつも、目の前もこいつも


壊れてしまいそうなくらい



儚くて。



僕が撫でていることで


壊してしまいそうで。



なんだか、ヒュウガを撫でている僕のほうが泣き出しそうで震えている気がする。



「おい…!この話が、そんなにツラかったか?ごめんな、いきなりこんな話して動揺するよな…。」


  「そうじゃ、ねぇんだ。昔を、ちょっとばかり思い出しただけだ。


   ツラかったよな…。ヒュウガ…。」


「ありが、と…。」
< 14 / 53 >

この作品をシェア

pagetop