ポンパドールの魔法
いつもと違い、おでこに風を感じる。

スースーするけど、何だか前向きな気持ちになる。

ソワソワしながら出社すると、神野さんはもう私の斜め前のデスクについていて、何かの資料に目を通していた。



「おはようございます。」

「おはよう。」



挨拶し終わった後、彼の視線は明らかに私のおでこに釘付けになっていた。

とりあえずは、成功かな。

関心を持ってもらえれば、それでいい。

これで会話が広がってくれるといいんだけど..........



「その髪型、可愛いね。」

「そう、ですか? ありがとうございます。」

「俺、女の子のおでこの産毛見ると、触りたくなっちゃうんだよね。」

「え、産毛? ホントですか? 」

「うん。後で触らせて。」

「うふふふ.......いいですよ。」



やった。 作戦成功。

彼は子供みたいな笑みを浮かべ、私を見ている。

その笑顔が可愛くて、キュンとしてしまう。



本当に、本当に、触れてくれるのかな。

そんなに近くに来てくれるのかな。

こんなにドキドキしてたら、今日は仕事にならなそう。

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