ポンパドールの魔法
それでも何とか業務をこなし、午前中は無事終了した。

上手く行けば、お昼も一緒に行けるかなと思ったけど、残念ながら、神野さんはお昼前から外回りに出てしまった。

早く帰って来ないかな。

もうすぐ三時になる。

課長に頼まれた書類をロビーまで届け、帰りのエレベーターのボタンを押した瞬間、背後から、待ち焦がれていた声が聞こえた。



「岸田、見っけ。」

「え? あ、お帰りなさい。」

「ただいま。」



振り返ると、大好きな彼の笑顔があった。

嬉しいと思うと同時に、エレベーターの到着を知らせる音が「チン」と鳴る。



「お、来た。乗るぞ。」



え? 手?

ほんの一瞬、目が合ったと思ったら、彼はすぐに私の手を取ると、そのまま手を引いて、エレベーターに乗り込んだ。

エレベーターの扉が閉まる。

二人きりだ。

うわ、嬉しいけど、どうしよう。

それに、この手は...........

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