ポンパドールの魔法
一気に緊張がマックスに達する。

口から心臓が飛び出しそう。

なのに、彼は繋いでいた手を一旦離し、行き先のボタンを押すと、その手で私の頭を抱き寄せ、髪にキスするのかと思うくらいギリギリまで顔を近付けた。



嘘? 嘘でしょ?

これは夢?

心拍数が急上昇する。

心臓のバクバクが、止まらなくなる。



私の耳の上辺りに顔を埋めたまま、彼は動かない。

シャンプーの匂いを吸い込むように深く呼吸して、抱き寄せていた手で髪を撫でたかと思うと、今度は満足したように、指でゆっくりと梳き始めた。

まるで、つるつる、サラサラの感触を楽しむように。

甘く爽やかな香りに、酔いしれるように。



「すごくイイ匂い。」

「そう.....ですか?」

「産毛もいいけど、これならこっちの方がいいな。サラサラしてて、気持ちいい。」

「あ、ありがとうございます。」


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