大好きだから
 2人を見るのも仕事。

 持ち場を離れるわけにはいかない。だけど、見ているのがだんだん辛くなってきた。

 怜央の笑顔を一身に受けるアンジュが羨ましくて仕方ない。

「――秋? 千秋?」

「は、はいっ!」

 我に返ると三井さんがわたしの顔を覗き込んでいた。

「どうしたの? ぼんやりして。気分でも悪い? なんだか瞳も潤んでいるみたいだけど」
「ちょっと人酔いしちゃったみたいです。外の空気吸ってきていいですか?」

 今日のスタジオはいつもより人数が多い。

 でもそれは単なるいいわけ。

「ここはわたしに任せて、新鮮な空気吸ってきて」
「すみません」

 三井さんの好意に甘えて、頭を下げると静かに廊下に出た。

 南青山にあるこのスタジオはデザイナーズマンションのようにおしゃれな建物。

 スタジオは2階。1階は控室。

 3階から屋上に出られるのを記憶していた。


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