大好きだから
 階段を上りかけた時、スタジオのドアが開いた。

 スタッフが出てきたのだろうと、気にも留めずに足を進めた時――

「千秋さん!」

 怜央だった。

 驚いて振り返ると、階段の下に怜央が立っている。

 それから怜央は階段を一段飛ばしで身軽に上がってくる。

 わたしは茫然と怜央を見つめた。

 どうして……?

 怜央はわたしが立っている段までくると、心配そうな瞳で問いかけるように見下ろす。

「千秋さん、大丈夫?」
「大……丈夫……って?」

 怜央はわたしが嫉妬していたことがわかっているの?

 返事も出来ずにいると、怜央はポケットから何かを取り出した。

 そして、わたしの手にそれを握らせる。

 怜央の一言と手に置かれた物に、瞬きも出来ないくらい驚く。
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