大好きだから
 有名人の怜央が恋人だと、誰にも言っていない。

 それに本当に怜央が自分の彼氏なのか、今はわからなくなってきている。

 以前のように隣のお姉さん的存在じゃないのだろうかと。

 約1ヶ月前、手がかじかむほど寒い日、わたしと怜央は恋人同士になった。

 怜央の甘くとろけそうなほどのキスに翻弄され、このままベッドへ……。なんて期待はたっぷりキスをされた後に砕け散った。

 散々、わたしの唇を楽しんだ怜央は極上の笑顔で「送っていく」と言ったのだ。

 あれから約1ヶ月ぶりに会ったのはこのスタジオだった。

 しかも、目と目が合っただけで、会話なんて一言もしていない。

 この1ヶ月間、スマホだけがわたしたちの会話の手段だった。

「怜央くん! アンジュちゃんの肩に手を置いてー そうそう! 優しく包み込む感じにねー」

 カメラマンの声で物思いにふけっていたわたしは我に返った。

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