大好きだから
 大勢いるスタッフの隙間からライトのあたる怜央を見ると、アンジュのオーガンジー素材のブラウスが包む華奢な肩に手を置いている。

 アンジュはプル艶の唇で怜央に微笑み……

 怜央はアンジュの肩に手を置いて見下ろし……

 仕事でも怜央が女の子と一緒にいるところを見たくなかった。

 わたしはクルッと向きを変えてドリンクコーナーに向かった。

 嫉妬だ。
 これは嫉妬。
 怜央の仕事なら当たり前。
 わかっているけれど、胸に渦巻くモヤモヤがとめどなく溢れ出てくる。

 ブラックコーヒーと書かれた銀色のポットを掴むと、紙コップに注ぐ。

「千秋、それブラックだよ?」

 声を落とした三井さんの声。

「知っています」

 これを用意したのはわたしなのだから。

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