大好きだから
「ブラックは飲めないんじゃなかった?」

 さらに追及する三井さんは不思議そうな瞳を向ける。

「好きじゃないけど、今は必要なんです。にがーいコーヒーが」

 ぼそっと呟き、熱いコーヒーをほんの少しすする。

 熱すぎて少ししか飲めないけれど、その苦味に顔を歪める。

「なにかあったの? 急にブラックだなんて」

 撮影場所から少し離れているから私語は大丈夫だけど、やはり声は落とし気味だ。

「なにもありませんよ。あ、三井さんも飲みますよね?」

 わたしは三井さんにもブラックコーヒーを淹れて手渡す。

「ありがとう。編集長の顔見て。ご満悦じゃない?」

 それはそうに違いない。

 事故に合ったモデルには申し訳ないけれど、今人気があるのは怜央なのだから。

 月刊誌なんて内容はどこも似たり寄ったり、表紙で売り上げが左右されるご時世。

< 4 / 12 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop