京娘と居候。〜陰陽師其の壱〜
「ただいま…」
桔梗はいつもの元気を無くした様に帰って来た。
今朝、隣で寝ていた時雨に驚き、桔梗は思わず時雨をひっぱたいてしまったのだ。
「…桔梗」
「あ、朔弥。ただいま…」
「時雨が機嫌悪いんだけど、何かあった・・・?」
「う…ま、まぁ色々あって…」
さすがに昨日の事は言えない…!
桔梗は昨夜の出来事を思い出し、頬を赤らめる。
「あ、いた!桔梗ちゃん!」
「え、梅ちゃん!?」
客室から出てきたのは、辻屋という呉服屋の娘の辻梅。
「昨日来たんだけど、居なかったから今日も来ちゃった。新しい着物持って来たよ」
「本当に!?ありがとう!」
梅の呉服屋の着物は品があり、尚且つ色々な種類があり、神楽家御用達。
「そうそう、一晩中時雨君と一緒だったんだって?」
梅が桔梗にそっと耳打ちする。
「え、えっと…」
「まぁまぁ、菊李さんも聞きたがってたし絲亀屋に行こう!」
絲亀屋は、古く続く老舗の料亭と宿の店で、女将の絲亀菊李さんは絶世の美女。