緑の風と小さな光 第1部
日が暮れる頃に老夫婦が帰って来た。

セレの上着を買って来てくれたのだ。

「あれじゃもう着られないよ。」

有り難い心遣いだ。

代金を払います、とセレがいくら言っても絶対に受け取らなかった。

「ピアリちゃんには、これ。」

帽子を買ってくれた。

ツバが広めで、縁が丸くめくれている。花柄のリボンが付いていた。麻布でできていて風通しがいい。

「可愛いわ!ありがとう!」

早速かぶってみた。丁度いい。

「よく似合ってるわ。これから暑くなるからね。」

「大事にするわ。」


この夜も老婆はピアリに付きっ切りで世話をし、老人はセレに晩酌を付き合わせた。



次の日の朝。

セレとピアリは、朝食を済ませると何度も老夫婦に礼を言い、荷物を手にした。

「お世話になりました。お元気で。」

「さようなら、おばあちゃん、ありがとう。」


老人は笑顔で…老婆は目に涙を浮かべて…セレたちが見えなくなるまで見送ってくれた。



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