緑の風と小さな光 第1部
第三章 熊男

アームレスリング

セレ達は国境を越えた。

そのまま南に進むと、少し賑やかな町に出た。

市場もあり、セレ達の国では見たことの無い物も並んでいた。

特に果物はピアリの目を引いた。

「ねえ、セレ。これ食べてみたい。買ってもいい?」

ピアリが選んだのはライチだった。

「ああ。そんなに高くないし。」

「うん。じゃあ、オジさん10個ちょうだい!」

「そんなに?味がわからないんだから、少しにしとけば?」

二人がそんなやり取りをしている頃、セレ達を追う様に国境近くを歩いている大男がいた。

身長は多分2メートルを超えている。肩幅も胸板の厚さも常人の2倍ある。野生味のある顔に茶褐色の癖っ毛。

歳は若そうだ。セレと同じ位だろうか。

肩に灰色のツバメがとまっている。そのツバメと何やら話している。

傍から見ると独り言を言っているみたいだ。

「…例の奴ら?いや、まだ見つからない。」

「でも多分近くにいる。俺よりほんの少し前に国境を通ったらしい。」

「で?ルルグの様子は?」

「落ち着いているか。そりゃ良かった。」

「ああ。仕事はきちんとやるさ。じゃあな。」

ツバメは何処かへ飛び去った。
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