緑の風と小さな光 第1部
「俺がやる!」

大男が手を挙げ、人混みを掻き分けて前に出た。

どよめきが起こった。

「でかいなぁ…」

「すげぇ強そう…」

この催しを見ようと群がる人々の中に、セレとピアリもいた。

実はセレもやってみたいと思っていた。

今の自分の体力が常人並みではない事はわかっていたが、実際にはどれ程なのか試してみたかった。

だが、普通の人間を相手にするのでは意味が無いし、フェアじゃない。

そこに、とても「普通」とは思えない大男が出て来た。

「これは面白くなりそうだ。」

興味深く見入った。

司会者が大男の名前を呼んだ。

「挑戦者、エルグ!」

エルグとは「山」だ。なるほどピッタリの名前だ。

サミーという男もなかなかの体格だ。

「どうなるかな…」

みんなの視線が集まった。

「始め!」

司会者は審判も兼ねていた。彼の合図で試合が始まった。

最初は力が拮抗している様に見えた。

段々とサミーの顔が赤くなり、汗が吹き出して来た。腕がぷるぷると震えている。

エルグの方は顔色一つ変らない。軽い腕慣らし、とでも言いたげだ。

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