緑の風と小さな光 第1部
そして、

「はあっ!」

エルグが気合いを入れた。

「ああぁっ!」

サミーの腕が台に叩きつけられ、体ごと地面に転がった。

「おおーっ!!」

見物客から歓声が上がった。

「サミーが負けた!」

「あんなデカイ奴、初めて見た!」

その後も司会者が呼びかけ、何人かがエルグに挑戦した。しかし誰も相手にならない。

ついに

「行って来る!」

「えっ?!」

セレはピアリに荷物を預けて、受付の方に歩いて行った。

あんな怪物みたいな大男が相手なら、自分が出ても文句は無いだろう。

「もう挑戦者はいないかな!」

司会者も興奮気味だった。

セレが手を挙げて観衆の前に進み出た。

「えっ?キミ…?」

司会者が不思議そうな顔になるのも無理はない。会場の人々もざわめいた。

セレは細身なのだ。腕の筋肉もごく普通だ。強そうには見えない。

ただ、容姿は整っているから御婦人達の目は惹く。女性がひそひそ話す様子があちこちで見られた。

「えーと、名前は、セレ、でいいのかな?」

司会者の手にはセレの名前が書かれた紙があった。

セレは頷いてエルグの前に立った。




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