緑の風と小さな光 第1部
「大丈夫か?手加減はしないぞ。そんな小枝みたいな腕じゃ折れちまうかもしれないぞ。」

エルグは睨む様にセレを見下ろして言った。

「やってみればわかるさ。」

セレは平然と答えた。

司会者がセレの名前をコールし、二人を握手させた。

「準備はいいかい?」

「ああ。」

「いつでも。」

二人とも頷いた。

「よし!始め!」

勝負が始まった。取り囲む人々は息を飲んだ。

全く互角だった。腕はどちらにも傾かない。

『こいつ、普通の人間じゃないな』

お互いにそう感じた。

暫くして、二人の腕が震え始めたが、まだどちらにも動かない。

エルグは「アペットにて食べ放題」を諦める訳にはいかない。

「くうぅっ!」

更に力を込めた。

少しずつセレが押されて来た。

力はエルグの方が上かもしれない。だがセレの持久力はかなりのものだ。なかなか倒れない。

「くっそー、しぶといな…」

とにかく勝負を着けようと、エルグは残っている全ての力をふりしぼった。

が、その瞬間、フッ、と全身の力が抜けてしまった。

「?!」

セレは勢いでエルグの腕を思い切り倒してしまった。

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