緑の風と小さな光 第1部

誘拐

「えっ!ダメだ!あんたがどうなるかわからないよ!」

エルグは目を丸くした。

「心配ない。ガルテンて奴は大した魔法使いじゃなさそうだし。そうしないと君の弟が危ないんだろう?」

「…それは…」

「決まりだな。」

ピアリをベッドに寝かせ、首にアメジストの様なペンダントを掛けた。

セレの手作りの護身用アイテムだ。

涙型の水晶をくり抜いて、中に魔法除けの植物のオイルとセレの血を入れてある。

大切な人を護ってくれる様に念を込め、何度も魔法をかけて作った。

「俺より魔力の弱い者の魔法なら、こいつが弾いてくれる。」

そして、

『俺が戻って来るまでこの部屋で待っていてくれ。ペンダントは君を護ってくれるものだから決して外さない様に。』

と書いたメモをテーブルの上に置いた。

必ず戻って来る、と後から書き足した。

宿の主人に宿泊延長料金を支払い、ピアリの事を頼んだ。

「さあこれでいい。ところで俺を縛り上げてから、どうやって運ぶつもりだったんだ?」

「肩に担いで行こうと思ってた。」

「目立ち過ぎだ。箱とか用意してないのか?」

「…ない。」

「呆れた誘拐者だ。」

思わずセレは笑った。
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