緑の風と小さな光 第1部
「その魔法石の力が私のものになるんだ。誰も私に逆らえなくなるよ…楽しみだねぇ。

しかも彼は若いし、見た目も悪くない。わくわくするよ。」


薄気味悪い笑顔で言った。

フィズの情報は誰にも売らない。これだけは絶対に自分のものにしたいのだ。

「……」

他人の体を乗っ取るなど、エルグには理解できなかった。

「さあ、もういいだろう!さっさと行け!」

ガルテンが短剣を握り直す。ルルグの首筋に血が滲んだ。

「早くしろ!」

仕方なくエルグは小屋を出た。

中からガシャン、ガシャンと重たいかんぬきを掛ける音がした。

「俺が馬鹿だった…」

エルグは当ても無く歩いて行った。


ルルグはまた小さな部屋に戻されてしまった。

「あの人を助けないと…」

この部屋には随分前から閉じ込められていた。その間、ずっとドアの錠前を削り続けて来た。

僅かなドアの隙間から細いヤスリで擦っていた。エルグにこっそり差し入れてもらった物だ。

だが、まだ切れそうもない。

「これを使ってみよう。」

小さなガラス瓶を取り出した。ついさっきガルテンの机から拝借した物だ。

< 126 / 287 >

この作品をシェア

pagetop