緑の風と小さな光 第1部
「もうっ!」

気を取り直してゆったりと温まろうとしゃがんだが、髪飾りを着けたままだと気付いた。

シエナからもらった大事な髪飾りだ。

外して、近くの岩に置こうとした時…

湯の中からいきなり人の腕が出て来た。

「誰っ?!きゃあ!」

驚いて立ち上がり、ピアリは足を滑らせた。

「うっ!」

胸を岩に強く打ち付けた。

「ピアリ?!」

セレは服のまま飛び込んだ。ピアリは意識を失っていた。

自分の上着でピアリを包み、急いで湯から出した。

「どうした?!」

エルグ達も驚いた。

「わからない。一瞬、誰かの魔法を感じた。」

もちろん温泉の中には誰もいなかった。

それよりもピアリが心配だ。

「肋骨がやられてるかもしれない。この先の集落に医者がいればいいが。」

とにかく連れて行くしかない。

ピアリの首筋と腰に手を副えて、赤ん坊を抱くようにしっかりと胸に抱えた。

「急ぐぞ。」

「ああ。」

セレの足は速かった。それでもエルグ達の事を考えて加減はしていた。

エルグは何とかついて行った。

ルルグは兄の背中にしがみついていた。
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