緑の風と小さな光 第1部
そんな速さで走ってもピアリの身体はほとんど揺れていない。

…これも魔法かな?とエルグは思った。あんな走り方はエルグにはできない。

…できたとしてもセレは俺にピアリを抱かせないだろうな…

「いいなぁ…」

小声で呟いた。


4キロの距離を10分足らずで駆け抜けた。

最初に見えた家で医者の事をきいてみた。

「いるよ。すぐそこだ。」

それらしき家に急いだ。


扉に「診療所」と書いた板が下がっていた。

「ここだ。」

エルグが扉を叩いた。

「すみません、怪我人なんです!」

「ケガ人?」

出て来た医者は、眼鏡を掛けた人の良さそうな中年の男性だった。

「温泉で足を滑らせて胸を打ったみたいです。多分、肋骨が折れている。」

「診てみよう。こちらへ。」

診療室のベッドに静かにピアリを横たえた。

医者は、打った箇所の辺りと脈や呼吸、目などを丁寧に診た。

「確かに肋骨が折れているね。でも内臓は無事だし生命に関わる事は無いよ。

打った時のショックで一時的に意識を失っているだけだろう。

骨折した所を動かない様に固定しておこう。」

「はい。お願いします。」
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