緑の風と小さな光 第1部
医者は丸みのある板をあてて包帯でしっかりと固定した。

「しばらく動かさない事だね。」

そっと衣服を着せて、毛布を掛けた。

後はピアリの自然治癒力を高める事しかできない。

セレはピアリの胸の傷に手を当てた。

フィズが吸収したエネルギーを生命のエネルギーに変換して少しずつ流し込んだ。

「何か手伝える事があったら言ってくれ。」

エルグとルルグも傍にいてくれた。

「ありがとう。今は大丈夫だ。」

セレはずっとピアリの傷から手を離さなかった。

1時間程してピアリが目を開けた。

「…セレ…」

「ピアリ!」

みんなでピアリをのぞき込んだ。

「気分は悪くないか?」

「うん、大丈夫。」

「何があったんだ?」

「お湯の中から誰かの腕が出て来たの。」

「腕?」

「これを盗ろうとしていたんだと思うわ。」

ピアリの手にはオパールの髪飾りがあった。

そこに

「意識が戻ったんだね。」

医者も様子を見に来て、ピアリの状態を確かめながら話に加わった。

「それね、この辺では時々あるんだよ。」

ここ数年、水の中から腕が出て来てアクセサリーなどが盗まれるという事件が起きている、と医者は話した。
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