緑の風と小さな光 第1部
「アクセサリー類は水のそばには置かない方がいいよ。

君のような若い女の子だと刃物で切りつけられる事もあるそうだ。」


診療所には多くの人が訪れるから、情報もそれなりに集まる。

「魔法使いで泥棒か…。たちが悪いな。セレ、捕まえられないか?」

エルグが言った。

「そいつを何とかしないと、ピアリも俺も落ち着いて温泉に入れないな。」

セレは真顔だ。

「うん、私ももう一回ちゃんと温泉に入りたいわ。」

ピアリが頷いた。

「そういう問題か…?」

エルグとルルグは呆れ顔を見合わせた。

「…あの…ところで…」

ピアリの声が小さくなった。

「私…温泉で転んで…その…服を着てなかったよね…? あの…セレ?あなたがここへ運んでくれたの?」

「…うん…」

「……」

ピアリは毛布に半分顔を隠した。

「すぐに上着でくるんだから見てないよ。背中や首筋しか触っていない。余計な事はしていない。本当だ。」

セレは少し気まずそうだった。ピアリの白い胸をちらりと見てしまったのは事実だから…

そんなセレの様子から『絶対に見られた!』とピアリは確信した。

よくわからない感情が高ぶって、涙目になった。

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