緑の風と小さな光 第1部
「…俺の事を引っぱたきたいか?」

セレが言った。ピアリは黙ってうなずいた。

「元気になったらな。何発叩いてもいい。だから早く治るように今は安静にしていろ。」

ピアリはまた黙ったままうなずいた。

さっきとは違う少し暖かい感情が湧いてきて、また涙目になった。


「とにかく、しばらくは水に近づかない事だね。」

その悪い魔法使いのせいで、村から出て行く者が後を絶たない、と医者は言った。

「水が安心して使えないんだから、当然だよね。不便極まりない。…ただね流水だと大丈夫みたいだよ。」

「水鏡…」

セレが思い出した様に言った。

「ピアリ。シエナの魔法を覚えているかい?」

「水面を鏡にして遠くの風景を見る魔法よね。あの時は、森の草木に着いた水滴と銀の器の水面をつなげたって言ってたわ。」

「そう。似ていると思わないか?」

「でも、あれは見るだけでしょ?」

「シエナは俺達の様子を見たかっただけだから。」

「シエナがやらなかっただけで、本当は攻撃なんかもできるって事?」

「多分。」

セレはヴァシュロークの魔法書を開いた。

「…やっぱりそうだ。」

「犯人は水の魔法使いって事ね。」
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