緑の風と小さな光 第1部
「囮《おとり》を使って捕まえられないかな。」

エルグにブレスレットをつけさせて、水を張った洗面器のそばに立たせた。

セレが持っていた純銀のブレスレットだ。金目の物が目宛てなら喰いついて来るだろう。

…だが、1日待っても何も起きなかった。




次の日、ピアリは随分と元気になった。

セレが治癒力を高めてくれているので、回復が早い。

ピアリはルルグの病気の事を医者に話してみた。

医者は詳しく症状をきいた。

「確かにアレルギーの症状だね。原因となる物質は特定できないけど、症状を抑える薬は作れるよ。」

「材料はほとんど揃っています。」

ピアリは採取した薬草の種類を医者に話した。

「へえ、よく知ってるね…」

医者は感心した。

「ええ。私の父親も医者なんです。それに、彼が良い医学書を持っているの。」

セレの方を見た。ヴァシュロークの魔法書の事だ。

「医学書?君も医者なの?」

「知識だけです。治療をした経験はありません。」

「ここで経験を積むかい?彼女が治るまではここにいるだろ。」

実はセレが望んでいた事だ。

「よろしくお願いします。」

二つ返事で引き受けた。
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