緑の風と小さな光 第1部

侯爵令嬢

エルグとルルグは医者の説明書とピアリが描いた薬草の絵を持って出かけた。

「あの2人は多分狙われないよ。」

医者は言った。

むやみに宝飾品が盗まれる訳ではないらしい。

「パートナーからのプレゼントみたいな物が1番狙われるんだ。僕も実は結婚指輪をやられてるんだよ。

切り付けられるのも恋人同士や夫婦ばかりなんだ。」

「嫉妬か…。どういう奴なんだろうな。」

「細い腕だったわ。すごく痩せている人だと思う。」

「他人の生活を覗き見ている様な奴だから、変な男だろうな。」

それぞれが痩せこけた気味の悪い男を想像していた。


「水が危険」なのが分かっていても、水を使わないで生きていく事はできない。

「お水、飲みたいな。」

ピアリは喉の渇きをうったえた。

そう言えばピアリは昨日から時々スープをすすっていただけで水は飲んでいない、とセレも気付いた。

「今、持ってくる。」

この辺りでは蛇口付の大きな瓶《かめ》に水を汲み置きする。

瓶の底には砂利や炭が敷いてあり、上から入れた水が濾過《ろか》されて下の蛇口から出てくる仕組みになっている。

その瓶からグラスに水を注いでセレが持ってきた。
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