緑の風と小さな光 第1部
「はい。…今日はありがとう。」

「礼など要りません。水を通って帰れるのでしょう?」

「ええ。」

小さな器に注いだ水を通ってノーラは帰って行った。

「ちょっと待った!逃がすのか!」

医者だ。

「大丈夫。また来ますよ。」

セレには確信があった。


そこに不機嫌そうにピアリが口を挟んだ。

「何なの?あのバカ丁寧な言葉と態度は?」

「気位の高い女性だと思ったから気を使っただけだ。」

「…ふーん…」

ピアリは苛ついていた。どうしてこんな気分になるのか自分でも不思議だった。


「でもお医者さんの言う通り、今までの事は許されないと思うわ。どうするの?」

「ただ罪を裁く事が問題の解決になるとは限らないよ。」

「…?」

この時、ピアリにはセレの言葉の意味はわからなかった。
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