緑の風と小さな光 第1部
「…?何で私に聞くの?」

「…あなたとセレは何でもないの?」

「?」

「私はてっきり、あなた達が駆け落ちでもしたのかと思ったわ。

だからセレが王室に仕えるのを辞めて旅をしているのかと…」


「やだ、それは無いわ。ねぇ、セレ。」

ピアリはキッパリと否定した。

「あ、ああ…」

セレの返事は曖昧だ。

「…ピアリはまだ目覚めてないんだな…奥手なんだなぁ。」

思わずエルグは言ってしまった。

クスッとノーラは笑った。

「それなら遠慮なくお願いするわ。セレ、あなたはどこか私の婚約者に似ているの。

…キスをもらってもいいかしら?もちろん挨拶のキスよ。」

「それ位なら。」

セレにも躊躇《ちゅうちょ》は無かった。

ふっ、と頬に触れるだけの、一瞬で吹き過ぎる風の様なキスだった。


「ありがとう…。もし、また会う事があったら今度はノーラと呼んでね。」

ノーラはまた水を通って帰って行った。
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