緑の風と小さな光 第1部

レビン

セレは診療所に戻ってピアリとルルグにノーラの事を話した。

「立派だったよ。」

「俺は見てられなくて…」

エルグは伏目がちだった。

「ノーラさんはこれからどうなるの?」

「晴れて自由の身だ。盗んだ物も全部返したらしい。もう何の咎《とが》めも無い。」

「いじめられたりしないかな…」

ルルグはそれが心配だった。

「彼女には立派な両親がいる。今回のノーラの姿を見てもまだ何か言う者がいたら彼等が許さないだろう。」

「両親か…そうだよね…」

ルルグが呟いた。

「あなたの薬がもうすぐできるわよ。」

ルルグを元気づけるようにピアリが言った。

薬草類は乾燥させて、煎じたりアルコール漬けにしてある。

「私も動ける様になったし、また旅ができるわ。」


「もうすぐ収穫祭があるから、それまで居れば?」

医者が勧めた。

収穫祭は小麦の刈り入れが終わった今頃に毎年行われる。

医者としては、もう少し『働き手』を引き留めておきたかった。

セレは医者の仕事を良く手伝うし、魔法薬も作れた。

エルグは意外にも料理が上手だった。

せめて妻子が戻って来るまで彼等に居て欲しい、というのが本音だった。
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