緑の風と小さな光 第1部
それでも彼の『国を護りたい』という気持ちは強かった。


『私にも王族の血は流れている。いくら存在を消されているとは言え…

いや、だから丁度いいのだな…どうせ長くは持たない…』


「王子はそう言っておられました。」

庭師は涙声だった。


セレの名前が出た時、突然、ビーカーの中で魔法石がキラキラとまるで生きている様に輝き始めた。


  『魔法石がセレを選んだ!』


ヴァシュロークは直感した。

石を持ち、ローエンと共に森の奥のセレの離宮に向かった。

道のりは数キロあったが、ヴァシュロークの風の魔法がかけられた馬は飛ぶように森を駆け抜けた。

10分そこそこで離宮が見えて来た。

庭園はさほど広くはなかったが、手入れが行き届き、いつも季節の花が咲き誇っていた。

この時はアイリスやユリが見事だった。

建物も室内の調度品も素朴な作りだったが、さり気ない装飾には洗練された感性と暖かみが感じられた。

腕のいい職人による仕事だとわかる。
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