緑の風と小さな光 第1部

収穫祭

ノーラは濡れ衣が晴れて自由の身となったが、その後外出する姿を見た者はいない。


「ノーラさん、大丈夫かしら…」

ピアリはずっとノーラの事が気になっていた。

セレも、もう少し励ませる事があればと思っていた。

そこに医者が収穫祭のチラシを持ってきた。

「楽器の演奏や歌の得意な人を募ってるよ。」

「ピアリ、歌えば? ピアリの歌でノーラさんを励ませるんじゃないか?」

エルグが真っ先に勧めた。

「いいと思う。俺もヒターラなら少し弾ける。ピアリの歌の伴奏に丁度いいだろう。」

セレも賛成した。

ヒターラとはギターとリュートの中間の様な弦楽器だ。

セレの唯一の趣味だ。離宮に自分のものがあったのだが、荷物になると思い置いて来てしまった。

「僕も何かやりたいけど、楽器は使えないなぁ。」

ルルグが言った。

「打楽器とか笛とか、少し練習すればできるものがあると思うわ。」

「笛か!笛がいい!」

「エルグは?」

「俺は遠慮しとく。食う事に専念するよ。」

エルグは多勢の前に出るのは好きではなかった。


「わかった。俺達は少し練習しなきゃな。」

セレは安物のヒターラと竹笛を調達した。
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