緑の風と小さな光 第1部
第5章 風車小屋と竜

風車小屋と製粉工場

いつの間にか夏に覆い尽くされていた。

強い陽射しに、風景がガラス細工の様に煌めいてまぶしい。

セレ達はその中を次の村を目指して歩いていた。

「今度はどんな所だろうな。」

身長2メートルの大男エルグが言った。

「多分また農村だから、この間の村とそんなに変わらないだろう。」

セレが答えた。

彼は風の魔法を使えるから、風の具合で遠くの集落の雰囲気を感じ取れる。

魔法を使えるかどうかは体質であり、生まれつきのものだ。

ヴァシュローク曰く

『魔法使いと普通の人間は、細胞の振動が違う』

のだそうだ。

セレは父親からは『風』母親からは『大地』の魔法を受け継いでいた。

ランディール家は代々「魔法使いの血筋」であり、遠い祖先から『水』『火』の魔法の力も貰っている筈だが、少々苦手だった。

セレとエルグの後ろでは、ピアリとルルグがしりとりに夢中になっている。

「り…りんご!」

「ごま。」

「…マッシュルーム!」

「麦。」

ルルグの方が余裕で答えていた。それにしても

「食べ物ばかりだな。」

エルグが笑った。

確かにここの所、あまりいい物を食べていないな、とセレは思った。

「次の村では少し金を作ろうか。」
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