緑の風と小さな光 第1部

欲しいもの

その日も仕事が終わり、みんなそれぞれの家に帰って行く。

ジンも工場を出て帰路につく。

エルグはそっと後をつけた。

上手い具合に、エルグの大きな身体を隠せるだけの木や建物が道沿いにあった。

ジンは集落から少し離れた畑の方に向かった。

畑も通り過ぎ、やがて、本当に一人しか住めないであろう小さな小屋に入って行った。

所々いびつになっている。自分で建てたのかもしれない。

1つだけの窓からエルグは中を覗った。間仕切りも何も無いから小屋の中は丸見えだ。それなのに…

「いない?」

出入り口は1箇所しかない。

「…おかしいな…」

思い切って入って見ることにした。

ドアには小さな鍵が掛かっていたが、こんな物はエルグにとっては無いのと同じだ。

ブチッと引きちぎり、中に入った。

やはり何処にもいない。

「どうなってるんだ…?」

部屋の真ん中辺りを歩いた時、床板が少し動いた。

「ん?」

そこだけ床板が外れる様になっていた。板をずらしてみると下には井戸のような穴があった。

深さは4~5メートル。水は無い。

「ここに入ったって事かな?」

人影は無かったが、飛び降りてみた。
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