緑の風と小さな光 第1部
いつの間にかピアリは起きていた。

…ほんの一瞬だが、セレの心臓は確実に止まった…

エルグはニヤニヤしていた。セレをからかうのが楽しくて仕方ない。

「た…ただ、の、冗談、だ…」

セレはしどろもどろになっている。

「ふーん…」

今の冗談は何が面白いのかしら?とピアリは思った。

セレは話をそらした。

「…エルグ、あの少年と目が合っただろう?」

「ジンと?ああ。合ったな。」

「おそらくその時だ。何かの術をかけられたんだろう。」

もしかしたら、エルグに気づきながらわざと後をつけさせたのかもしれない。

工場で初めて会った時、セレの目を見つめて来たのも多分それだ。ただ、セレには効き目が無かった。


しばらくは傍観していようとセレは思っていたのだが、そうもいかなくなった。

「明日は俺も行く。」
< 210 / 287 >

この作品をシェア

pagetop