緑の風と小さな光 第1部
次の日、ジンは工場には来なかった。

体調不良という話だった。

セレとエルグは、その日の仕事をさっさと片付けてジンの小屋に向かった。

小屋にはジンの姿は無かった。

昨日エルグが見つけた床下の穴に降りてみた。

「ここに横穴があるだろ。これがジンの寝床につながってるんだ。」

「気配は感じるけど、こっちからじゃないな…」

どこだ…?

「上だ!」

セレが気付いたが遅かった。頭上を塞がれた。

ジンが竜の姿に戻って、自分の身体で穴の入り口を塞いだのだ。

ジンの身体で小屋が一杯になり、今にも壊れそうだ。

「上手く引っかかってくれたね。

僕は魔法書が欲しいだけなんだ。魔法使いはみんな持ってるだろ?

魔法書を渡してくれれば何もしないよ。すぐに出してあげる。」

ジンの声だった。

「やられたな…エルグ、持ち上げられるか?」

「やってみる。」

怪力のエルグが渾身の力で押し上げた。

「くっ…」

ジンの身体は動かなかった。

「ダメだ…」

「そうか。」

セレは呪文を唱えた。エルグには全くわからない言葉だ。

ジンの大きな身体が小屋ごと浮いた。

エルグに使ったのと同じ魔法だ。
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