緑の風と小さな光 第1部
セレは自分のこの感情を「恋愛」だとはまだ認めたくなかった。


「…無理しなくていいよ。セレがピアリを見る時の目は特別優しい。」

「……」


あまり感情を露わにするのは王族として好ましくない、と常々教えられ、自分でもそう思っていたのだが…。

「だからセレに話そうと思ったんだ。どうして魔法薬が欲しかったか…。」


ジンは、ある女性への想いを話し始めた。

「ルーチェって知ってるよね?」

「ああ。よく気の付くいい子だ。…なるほどね。」

ルーチェは祖父の風車小屋に良く遊びに行く。

おじいちゃんの事ももちろん大好きだし、風車が回るのを見るのも好きだった。

ジンも、風車が臼を回す音を聞きながら丘の斜面で昼寝をするのが好きだった。

「そこでルーチェに出会ったんだ。」

ぐっすり眠り込んでしまったジンを起こしてくれたのだった。

「陽が落ちると寒くなるわ。風邪を引くわよ。」

「あ、ああ…。ありがとう。」

それから時々ジンとルーチェは丘の上で会うようになった。

ルーチェが風車小屋のハンの孫娘だという事は知っていた。

以前から風車小屋の様子は何となく伺っていた。
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