緑の風と小さな光 第1部

狩人

ウォールは酒場に入った。

酔っ払いの世間話には、意外と貴重な情報が混じっていたりする。

コップ酒を注文してチビチビと飲んでいたが、彼も魔法使いだから酔う事は無い。周囲の雑談に聞き耳を立てていた。

「今の仕事じゃちょっと厳しいよなぁ…」

「今朝、市場で可愛い娘を見つけたんだ!」

「今年の夏は暑いな。家の中が蒸し風呂の様だ。」

「俺のかみさんは、ああ見えて意外と胸が大きいんだ。」

などなど…。

ラドニーの工場で働く男達も来ていた。

「機関室に工場長がしょっちゅう行ってるの、知ってるか?」

「いや。でも別に不思議じゃないだろ。」

「あそこさ、火をたいているのに暑くないんだよ。」

「…それはおかしいな。」

「工場長は魔法使いじゃないかと俺は思うんだよ。」

その2人の話にウォールは興味を持った。

「面白い話をしているな。」

会話に割り込んだ。

話していた男達は、何だ?という顔をした。

「誰だい?初めて見る顔だな。」

「俺は魔法のアイテムを売買している行商人さ。その工場長ってのは魔法使いなのかい?いい客になるかもしれん。」

狩人、とは言わなかった。
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