緑の風と小さな光 第1部
次の日、早速ウォールは工場にやって来た。

ズカズカと工場に入り、いきなり大声で尋ねた。

「工場長はどの人だい?」

「奥にいる、あの茶色の服を着た人だよ。」

近くにいた作業員が答えた。

ウォールは礼も言わずにラドニーの方に歩いて行った。

ラドニーは機関室に入ろうとしていたが、ウォールに気付いて足を止めた。

「君は?」

「俺はウォールと言う。魔法関係の商いをしている者だ。ここの工場長がいい客になるかもしれないと聞いたんでね。」

「確かに、欲しい物はあるけれど…」

と言いかけた時

「ラドニーさん!臼の動きが遅くなってる!」

作業員達が騒ぎ出した。

「わかった。今、機関室を見に行くよ。」

ウォールに、ちょっと待っててくれ、と言ってラドニーは機関室のドアを開けた。

途端に

『魔法だ!』

ウォールは誰かの魔法を感じた。もちろん工場内にはセレもいたから、同様の事を感じた。

セレは黙っていたが、ウォールは

「ちょっと失礼!」

と、無理矢理、機関室に入り込んだ。

「おいっ!君、困るよ!」

ラドニーが止めたが、既にウォールは中を見ていた。
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