緑の風と小さな光 第1部
遊び盛りの小さな息子がなかなか帰って来なかったので、ハンは名前を呼びながら探していたのだ。

「思わず出て行っちゃったんだ。そうしたら狩人に見つかってしまった。」

話を聞いているエルグは涙ぐんでいた。

「セレと同じ魔法を使う奴だった。そいつの魔法は弱かったから、何とか振り切って逃げたんだ。少し血を盗まれてしまったけど。」

胸の傷はその時のものだ。

「ハンが気付いて、狩人を追い払うのを手伝ってくれたんだ。

そして、逃げろ、って。風車小屋は俺が守るからもうここには来るな、って…」

話している内に、ジンはますます苦しそうな表情になってきた。

人間の姿でいられる時間を大幅に過ぎていた。

「ジン、大丈夫か?無理をするな。」

言ったのはセレだが、セレ自身もボロボロだ。

「今のセレに言われてもね。」

ジンは失笑した。

「もう駄目だ…ごめん、ルーチェ。外に出る。」

ジンは庭に走り出た。

「ジン!」

ルーチェは心配して後を追った。

ジンは外に出た途端に竜の姿に戻った。

ルーチェの目の前で…
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