緑の風と小さな光 第1部
ジンは、ルーチェの涙を手でそっと拭いながら

「今度こそ限界だ。…ごめん。」

と言って、ルーチェから離れると、竜の姿に戻った。

「はあ…これが君の本当の姿か…」

ラドニーはまたもや驚かされた。

ここ数日、ジンがラドニーの工場の屋根で眠っていた、という話にも驚いた。

「そうだったのか…」

今まではセレの魔法で屋根の上に上げてもらっていたが、今日の状態ではセレは魔法は使えない。

「あの狩人も来ないだろうから、今日はここで眠れば?」

ラドニーがそう言ってくれたので、庭を貸してもらう事にした。

「ありがとう、ラドニーさん。ルーチェもありがとう。今日は良い日だった。」

「私こそ、ありがとう。もう休んだ方がいいわ、ジン。」

ルーチェは、家の中から毛布を何枚も持って来てジンに掛けた。

「ありがとう。おやすみ、ルーチェ。」

「おやすみなさい、ジン。」


それぞれの想いを胸に、みんな眠りについた。


セレは2人の事を、自分の事の様に感じていた。

「良かったな…良く言ったな…ジン。」

セレの中で、ピアリへの想いは段々とはっきりしたものになって来ていた。

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